映画「岸部露伴ルーヴルへ行く」は謎めいた”黒い絵”を巡るスリラー!そのネタバレあらすじ、感想も!!

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映画記事

こんにちは。カナエです。

今回は高橋一生さん主演の映画「岸部露伴ルーヴルへ行く」について書きたいと思います。

黒い邪悪な絵を探し求める露伴・・しかしそこには意外な秘密が・・

映画データ

製作年    2023年  邦画

監督     渡辺一貴

原作     荒木飛呂彦

脚本     小林靖子

撮影     山本周平他

美術     磯貝さやか

キャスト   高橋一生、飯豊まりえ、長尾謙杜、木村文乃他

映画のあらすじ(ネタバレ)

岸部露伴(高橋一生)は昼下がりに白日夢を見ます。それは青年の頃に出会った奈々瀬(木村文乃)といういう女性の夢でした。

ねえ  この世で最も黒い絵って知ってる?

<画像出典>eiga.com/movie/98646/gallery/

その黒いワンピースの女性は夢の中で露伴に問いかけます。漆黒の長い髪に隠れて顔は見えません。

***

露伴は骨董品店で美術品を見ていました。すると店の男が声をかけてきます。

お客さん、何かお探しならお手伝いしますよ

ちょっと美術品について取材してるんだが写真じゃなく実物を見たいと思ってね

露伴は答えました。

取材ってテレビか何かですか

漫画だ

漫画だと聞いて男は笑います。

まあ漫画に描くくらいなら本物買うのはもったいないって   うちはね、正直複製は複製で売ってるからね   漫画家さんでも買えますよ

するともう一人の店員が顔色を変えて走って来ました。店員は露伴のことを知っていたのです。

おい、やめろよ!   岸辺露伴だ

あ?  誰だって   岸辺・・?

この岸辺露伴が本物と偽物を描き分けられないと?

露伴は置いてあった茶碗を取り上げます。

僕がこの茶碗を描いたら鑑定士はすぐに偽物だと見抜くだろうな   それは僕がリアルに感じたそのままを描くからだ   漫画に必要なのはリアリティーだ   僕は美術品にリアリティーを求めてる

露伴の勢いに押された男は言いました。

本物は裏の方にありますから

店員たちは露伴を裏に案内します。

それから君たち、僕は盗まれた美術品を売る商売についても知りたい

・・は?

故買屋   つまり君たちのことをだ   取材させてくれ

何で・・それを・・

男たちは狼狽えます。

うちは取材は断ってる   帰ってくれ

すると露伴は店員たちに叫びました。

ヘブンズ・ドアー!

露伴は両手を広げます。

今心の扉は開かれる

うあっ!!

男たちは額に裂け目ができて倒れます。二人の男の顔に本が出現しページが開きました

さて

露伴はドアに佇んで言います。

これは僕の能力だ   人の心や記憶を本にして読むことができる

露伴は男の一人に跨がって本を読みます。

人間の体には今まで生きてきたすべてが記憶されている   たとえ本人が忘れていても消せない記憶が本に記されるのだ

露伴は本を読みながら笑います。

これはインタビューなどでは得られない100%のリアルだ   そのリアリティーこそが僕の漫画に命を吹き込むエネルギーになる

露伴は男の本にペンで書き込みをします。

全ての作品は最大の敬意を持って扱う”   書き込まれた命令には絶対に逆らえないからな    漫画も然りだ

露伴が満足して立ち上がると、落ちていた画集に目が行きました。

黒い絵?

露伴は画集に紹介されていた真っ黒な絵を見て愕然とします。

***

露伴は編集者の泉(飯豊まりえ)と一緒に絵画のオークションに参加します。

オークションって無料で参加できるんですね   お金持ちしか参加出来ないと思ってました

泉は落札用のパドルを露伴に渡し、二人はオークション会場に向かいました。

  

露伴はモリス・ルグランと言う画家の描いた黒い絵を買おうとしていました。

オークションで、「ノワール」という題名のその絵が提示されると早速露伴は落札しようとします。しかし後ろにいたバイヤーと見られる二人の男たちが競ってきました。

<画像出典>eiga.com/movie/98646/gallery/

男たちのおかげで値がどんどん上がっていきましたが、なんとか150万円で露伴は絵を購入できました

***

編集者の泉は大金をはたいて絵を買った露伴に驚きます。露伴の家に向かって坂道を上がりながら泉は言いました。

係の人が言ってましたよ   この絵の作家さん、亡くなって少し価値は上がったけど流石に150万出す人はいないって

投資のために買ったわけじゃない   気にいったのは”色”さ

色?  ほとんど”黒”ですよ?

だからさ

露伴は言います。

***

露伴と泉は買って来た絵をイーゼルに飾ってながめます。

この絵を描いたモリス・ルグランという作家は黒い絵を描こうと日本の墨を使ったり色々試していたらしい

露伴はそう語り、泉に問いました。

泉くん、この世で最も黒い色を見たことがあるか?

うーん? 最も黒い?  やっぱり墨ですかね??

露伴は写真集を書庫から出して泉に見せました。

これは極楽鳥の一種で羽毛はほぼ100%光を吸収する

真っ黒!  こんな鳥がいるんですね   黒すぎて羽が見えない   ブラックホールみたい

泉は感心します。

光を反射しないから見えないんだ   実際はもっと黒いだろうな   だがおそらく・・

露伴は一度言葉を切り、それからまた話し出しました。

この世に存在し得ない黒がある   そしてそれを使って描かれた黒い絵も存在する   画家の名前は山村仁左右衛門、今から250年ほど前に・・

露伴は這っている蜘蛛に気づきます。

山村仁左右衛門?  全然検索に引っ掛かりませんね

泉は携帯を見ながら言いました。

無駄だ   名前も絵も記録はどこにもない   だから思い出すこともなかったんだが・・

露伴の脳裏に黒い髪の女が過ります。

誰かから聞いたんですか?

露伴は顔を曇らせます。

・・忘れた

***

外で犬の鳴き声がしました。露伴か外に出ると男が倒れていました。オークションで露伴と競り合った男の一人でした。

まさか家まで追いかけて来たのか?

露伴か驚いていると、中で泉の悲鳴がしました。

泉くん、どうした?

先生、あの絵を盗られちゃいました

***

オークションで競り合ったもう一人の男は絵を持って逃げていました。階段を降りて葉陰に隠れると絵の後ろを保護していた紙を破ります。

あれ?  ・・ない

男が戸惑っていると絵の端から黒い液が溢れてきました。

何だ・・

男は自分の体に大量の蜘蛛がたかっているのに気づきます。

わああっ

夢中で蜘蛛を払う男の耳に車のクラクションが響きました。

車が来る・・?

男は恐怖に駆られ絵を投げて走り出します。

***

男を追いかけてきた露伴は道にあった絵を拾いました。泉が来て喜びます。

取り戻したんですね

いや、捨ててあった

露伴は絵を泉に渡します。

<画像出典>eiga.com/movie/98646/gallery/

やだ、裏が破られちゃってる   ひどいなあ

泉は絵の後ろを見て怒りました。それから目をこらします。

先生、絵のに何か書いてあります  フランス語が・・  ”これはルーヴルで見た黒”? ええとそれから・・  ”後悔”

露伴は泉の言葉に考え込みます。そんな二人を露伴の家の前で倒れていた男が木の陰から覗いていました。

***

露伴と泉は露伴の家に戻ります。

警察を呼ばなくていいんですか

呼ぶと面倒だからな

露伴はイーゼルに絵を裏にして置きました。

”ルーヴルで見た黒” か・・

”後悔”って、なんでしょうね   作者は死んじゃったし

泉くん  次の取材先が決まった

ルーヴル美術館だ

***

オークションの男の一人はフランス語で電話しながら歩いていました。

あの岸辺露伴ってやつはなんか変だ   俺はもう降りる   え?  ああ絵の裏には何も入ってなかったよ

男はそのまま歩き去りますが、もう一人の男は車から半狂乱で逃げていました

何なんだ?  なんで車が追ってくるんだ??

疲弊した男は倒れます。そこに姿のない車が襲いました。

男は車に轢かれて息絶えました。

***

露伴はデビューしたての頃を思い出していました。

あの夏、僕は漫画に集中するために祖母の家に泊まり込んでいた。その年祖父が亡くなり祖母は古い旅館だったその屋敷を下宿として貸し出すことにした。そして思い切り良く身の回りの物以外すべて売りに出してしまった。時々古物商が来る以外は部屋も多くあり、漫画に集中できるはずだった

♣♣

祖母が下宿を始めて最初の住人が奈々瀬だった。編集者から女性のキャラに魅力がないと苦言されていた僕は奈々瀬をこっそりスケッチしていた。奈々瀬はそれに気づいて文句をつけてきた。

まさかあなた”のぞき”してるの?

黒いワンピースを着た髪の長い奈々瀬は言った。そして僕のスケッチブックをパラパラとめくった。

あなた、漫画を描いているの

女の子を描くのが苦手だから練習させて貰ったんだ   ”のぞき”じゃない

僕は奈々瀬に謝った。

断りもなく無礼でした  ごめんなさい

すると奈々瀬は僕に言った。

今度あなたの作品を見せて

♣♣

ある晩漫画を見せて欲しいと奈々瀬に部屋に呼ばれた。奈々瀬は渡された原稿を見ながら部屋に入って座るように僕を促した。

もう遅いから別の日に

ぼくが躊躇していると突然停電したので僕はランプをつけた。そこだけほんのりと明るくなり周りは闇だった。奈々瀬は闇を見つめて言った

ねえ、この世で最も黒い絵って知ってる?  光を全く反射させない見ることも出来ないほどの黒い絵の具で描かれた絵

だったら存在さえわからないってことじゃないか

僕は言った。

でもあるのよ   最も黒く最も邪悪な絵が   もう200年・・ううん、250年も昔から・・  描いたのは山村仁左右衛門と言う絵師だった

僕は奈々瀬の闇に浮かぶ横顔を見つめた。

彼は黒にこだわっていてね   理想の顔料を見つけたのだけれど、それは崇められていたご神木から採れるもので傷つけたら死罪は免れない・・   それでも彼はその黒を使って絵を描いて  死んだ

それが最も黒い絵

奈々瀬は呟くように僕に言った。

それはどこにあるの?

ルーヴルに

奈々瀬は鏡の方角に目をやった。

光を反射する鏡は人を映すけど   絶対的な黒が映すものは何か   決して見てはいけないし触ってもいけない

奈々瀬は僕を見た。

あなたは似ている

黒い蜘蛛が奈々瀬の指を這った。

♣♣

それから奈々瀬は僕を避けていた。

ある日祖母が僕に訴えて来た。

蔵の整理をして貰ってた古物商の川島さんが急にいなくなっちゃった   蔵にあった絵の買い手が決まってたんだけどねえ・・

だったら取りにくるんじゃない?

僕はなおざりに言った。

♣♣

奈々瀬が部屋に上がる気配がしたので僕は描きあげた漫画を見せに行った。

露伴君!

黒いワンピース姿の奈々瀬は僕を見ると抱きついてきた。僕は奈々瀬を抱きしめて言った。

<画像出典>eiga.com/movie/98646/gallery/

あなたの力になりたい   すべての恐れからあなたを守ってあげたい

奈々瀬はしばらく僕の胸で目を閉じていたが、僕の原稿を見ると顔色を変えた。

これは私?  あなたは何をやってるのよ!

奈々瀬は彼女をモデルにした僕の漫画を花切鋏でグサグサと刺した。そしてハッとしたように僕を見た。

露伴君   ごめんなさい

奈々瀬は部屋を出ていった。

それきり彼女は二度と戻らなかった

♣♣

奈々瀬? そうかねえ   いたかねえ

祖母に奈々瀬の行方を訊ねても要領を得なかった。

それより蔵の中にあった絵ね、買い手が来ることになったから相手を頼むよ   なんでも外国人らしくって

(ラジオから古物商を営む川島さんの遺体が見つかったというニュースが流れていた   ニュースは付近に水がないのに溺死だったとその不審な死を怪しんでいた。)

♣♣

蔵の絵を買い取りに来たのはフランス人だった。

これですか

メルシー!

彼は僕が渡した絵をひったくるように持って行ってしまった。

その奈々瀬の記憶が黒い絵と共に蘇ったのはなぜだろう?  この世で最も黒い絵があるというルールに行って確かめたい

好奇心かもしれないと思いながらも露伴はルーヴルへの想いを募らせていました。

***

エマ、日本人のアテンド  今日だろう?

ルーブル美術館ではジャックがエマに確認していました。

そうだった   忙しくて   メールで質問が来てたけど返信する時間がなかったわ

私が調べて置くよ

じゃあ転送します

エマ、彼はフランスでも有名な漫画家だからよろしく頼むよ

わかってるわ   ジャック、心配しないで

エマは露伴たちを迎えに出て行きました。ジャックはエマが転送したメールを見ます。メールはモリス・ルグランと山村仁左右衛門という二人の画家とその絵について質問していました。

ニザエモン・・聞いたことがあるな

ジャックは呟きます。

***

はじめまして  ルール美術館文化メディエーション部の野口エマです

露伴たちを迎えに行ったエマは自己紹介しました。

はじめまして   こちらが漫画家の岸辺露伴先生、私は担当編集の泉京香です

泉は頭を下げました。

車はこちらです

ルーヴルの魅力を伝えるのが仕事のエマは二人を案内します。

***

ルーブル美術館に到着すると泉はその広さに感嘆します。

思った以上に大きくて広いですね~   全部回るのに数日かかるとか

だから効率よく取材されたほうがいいですよ

露伴はフランスでも知られていてサインを求められます。露伴は素早くサインすると足早にファンから立ち去りました。

美術品だけじゃなくて建物にも圧倒されますね

華やかな装飾の施された天井を見上げながら泉は言いました。

もとは中世の要塞で王宮として使われた歴史もあります

エマは説明します。

露伴はレオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザをスケッチします。見回すと展示している絵を模写する人たちがいました。

模写がオーケーなんですね

泉はびっくりします。

ええ、ルーヴルでは古くから文化芸術の発展に力を入れていて模写もその一環として受け入れています

エマは話しました。

メールでご質問のあったモリス・ルグランですが、彼もあんなふうに模写してました

模写?

露伴は呟きます。

ということはモリスさんがルーブルで見た”っていうのはルーヴルで黒い絵を模写したってことですかね

泉は推測します。そしてエマにルグランの黒い絵を見せました。

え?  いやこれは彼のオリジナルだと思いますよ   亡くなられたあとご遺族の方が絵を処分されたみたいですけど

実は彼が見たのは質問したもうひとりの画家、山村仁左右衛門の絵じゃないかと思ったんだが

露伴は言いました。

それは今調べて貰ってます   ただ・・

ルーヴルに日本画はない

露伴が話を繋げます。

え? そうなんですか

泉は驚きます。

ああ  ただ、それでもだ

たしかに可能性はあります   現在ルーヴルの所蔵品を新しく作った保管センターに移動させていますが・・

確かセーヌ川の水害から守るためだとか

露伴は口を挟みます。

そうです   数年前から始まったんですが、その作業中に地下倉庫で美術品が1000点以上も発見されました   戦争で記録が消失していたんですが、かなり貴重なコレクションで東洋美術も100点以上あることがわかりました

もしかしてその中に仁左右衛門の黒い絵も?

泉がエマに訊ねていると、一人の日本人が声をかけて来ました。

辰巳さん

エマはその日本人を露伴たちに紹介しました。

こちらは辰巳隆之介さんです   今お話しした東洋美術の調査メンバーの先生です

辰巳は露伴に言いました。

いきなりすみません   先日先生の漫画を拝見したものですから

よろしく

二人は握手します。

ルーヴルのキュレーターに外国人は珍しいのでは?

人手不足からの臨時雇いですよ

辰巳は笑います。

いやいや、辰巳さんは鑑定家としても有名な方で、今回はルーヴルたっての依頼でコレクションの調査にご協力頂いています

エマが急いで訂正しました。

***

なるほど山村仁左右衛門のことは記憶にありませんが、モリス・ルグランのことなら私も知っています

辰巳は話しました。

模写の技術に優れた画家で亡くなってしまったのは残念です

亡くなったのは病気で?

露伴は訊ねました。

いや、事故だと聞いています

すると男の叫び声が館内に響きました。

ジャックが何かに怯えたように声を上げていました。そして追ってくるものを追い払うように走り出します。

やめろ、 助けてくれ!

ジャックはフランス語で絶叫しました。そして階段のヘリから階下に落下しました。

ジャック!

<画像出典>eiga.com/movie/98646/gallery/

エマがジャックに呼びかけます。

誰か救急車を!

***

大変なことになりましたね

泉は露伴とホテルに向かいながら言いました。

本当に自殺ですかね  あの人うわ言みたいに、蜘蛛”ってうめいてましたよね  先生ちょっと見てください

泉は携帯でモリスの黒い絵を拡大しました。

これは蜘蛛だしこの流れてるのは髪の毛みたい

泉くん、君は意外と良く見てるな

先生も気づいてました?

ああ  関係があると言うには漠然とし過ぎているが・・   しかし描いたモリスも事故死したらしいからな

なんかやな感じですね

モリスはルーヴルで何かを見た  そして後悔した

でもあのフランス語、後悔って名詞でしたよね  ”後悔した”じゃなくて”後悔”

露伴はびっくりして泉を見ました。

君は百に一ついいこと言うな

露伴は感心しました。

つまり彼は”後悔”を見た

一体それは・・

二人は沈黙します。

***

エマはオフィスで同僚のマリィに訊ねます。

このパソコンを最後に触ったのは?

ジャックのはずよ   あなたに頼まれた日本人の画家を調べてた   ”名前に聞き覚えがある”って

マリィは話しました。

そう・・

***

エマは仁左右衛門の絵が見つかったと露伴たちに連絡しました。二人はルーヴルにやってきます。 

実はジャックが職員専用の管理記録を確認してくれたんです 

エマは暗い館内を二人と話しながら歩きました。そしてオフィスにやってきます。

こちらです

エマはパソコンの画面を露伴らに示しました。

絵のタイトルは不明、作者は山村仁左右衛門   保管場所はZ-13   これはこの美術品にある地下倉庫の番号です

先生、これが黒い絵かしら

泉が露伴に言います。

ただこのZ-13倉庫は老朽化が進んでいてかれこれ20年以上使われていないんですね   美術品がおいてあるはずもないんです

エマは話を止めて考えます。

ジャックはこの倉庫に行ったのかも

Z-13倉庫を見ることはできるのか

露伴はエマに訊ねました。

大丈夫です   行きましょう

三人は倉庫に向かいます。

***

倉庫を目指して三人は長い通路を歩きます。すると辰巳がエマを呼び止めました。 

仁左右衛門の絵が見つかったって?

辰巳は露伴に笑いました。

露伴先生、驚きましたよ   あのあと調べてみましたが発見されたコレクションの中に仁左右衛門の絵はありませんでした   それがまさか見つかるとは・・

辰巳はエマに言いました。

私も行く   東洋美術に関わるものとして見過ごせないからな

***

辰巳を入れた四人は地下倉庫へと進みました。エマは消防隊のユーゴニコラスに合図しました。

この先はかなり古く迷路のようになっているので同行するのが決まりです

携帯やカメラは持ち込み禁止です

消防隊のユーゴがフランス語で言いました。

ライターやナイフなど作品を傷つける可能性のあるものも同様です

警備員さんじゃなくて消防士さんなんですね

泉が携帯やカメラを渡しながらエマに話しました。

ルーヴルには消防士が常駐しています   何かあった時に美術品を運ぶのは彼らなんです   だからルーヴルのどんな秘密の通路も把握してますしすべての扉の鍵も持っています

Z-13倉庫も?

露伴が聞きます。

もちろん

六人は地下倉庫を目指します。

***

長い階段を降りてユーゴは扉の鍵を開けました。

Z-13倉庫はこの下です

するとエマにマリィからメールが来ました。

ジャックが仁左右衛門の名前を聞いた人が分かったそうです   二十数年前にルーヴルでキュレーターをしてた人みたいです   記録によると彼が仁左右衛門の絵をZ-13に登録したようです

エマは露伴たちにそのキュレーターの写真を見せました。その顔に露伴は愕然とします。祖母の家で蔵の絵を買って行ったフランス人でした。

そのキュレーターは今どこに?

そのあと突然いなくなって今も行方不明みたいです

エマの答えに露伴は凍りつきます。

まさかうちの蔵の絵が仁左右衛門だったのか?

***

扉が開いて六人はさらに深い地下に降りて行きました。コンクリでなく昔の石のトンネルのような崩れた道を歩いて行きます。足場の悪さに息遣いも荒くなります。

地下水の流れる湿った場所がZ-13倉庫でした。六人はそれぞれ懐中電灯で周りを照らし内部を確認します。

ニコラスが落ちていた絵を拾って辰巳に見せました。

これは・・

皆が集まってきて息を飲みます。

<画像出典>eiga.com/movie/98646/gallery/

タッチは間違いなくフェルメールだ

露伴が言いました。

フェルメールってもしかしてあの有名な?

泉が聞きました。

もしかしなくても有名だ   だがフェルメールでこんな作品は

あったんですよ   発見されたコレクションの中に

エマが説明しました。

鑑定の結果間違いなくフェルメールでした   発表されたら世界中で大騒ぎになります   でもこれはもう保管センターに移動されてるはずなのに  ・・どうして

忘れちゃったんですかね

泉が言うとエマは否定しました。

それはあり得ません!

じゃあ偽物とか?

すると辰巳が笑い出しました。

そうだ   彼女の言う通り   これは本物ではない    エマ、しっかりしてくれ!

え?

完全な偽物だ 

辰巳はフランス語で言いました。

ニコラス、処分しとけ

辰巳は絵をニコラスに渡しました。

待った

露伴はフランス語でニコラスを止めました。

とんでもない   これはオリジナルだ

露伴は懐中電灯で絵を照らしながら告げました。

この絵には本物のリアリティーがある   僕が言うんだから間違いない

露伴は絵を泉に渡しました。

まあそうですね・・

え?  じゃあ保管センターに行ったのは?

エマが聞きます。

露伴は拾った美術道具を懐中電灯で照らしました。道具にはM・ルグランと名前が彫られていました。

モリス・ルグラン?  模写の??

泉が驚きます。

オリジナルがここにある以上保管センターに行ったのはモリスの描いた模写というより・・贋作だ

バカな!

辰巳が声を荒げました。

ルーヴルでは模写する場合、オリジナルより20%大きさを変えるという規則があるんですよ   それに模写が許されてるのは展示した絵だけでこのフェルメールは展示どころか発表すらされていない     不可能だ

だからここを使った   誰も来ない忘れられた倉庫で贋作を描いていたんだ

露伴は泉に言いました。

泉くん、新作のプロットを思いついたよ

え?

モリスは美術品窃盗グループのメンバーだった”ということにするんだ

露伴はプロットの説明をします。

使われていないこのZ-13倉庫で名画の精巧な贋作を作り、贋作の方を保管センターに送る   オリジナルはモリスが持ち帰り自分の絵の裏に隠して海外へ   海外のオークションでモリスの絵を安値で買えばその裏には名画が入ってるというわけだ    どうだ?

面白いですけど、無理があるような・・

泉が言いかけるとエマが強く否定しました。

模写の許可証だけでそこまでできません!

仲間がいたとしたら?  ルーヴル内を自由に行き来できる人間・・消防士やキュレーター

露伴はニコラスたちや辰巳の顔を懐中電灯で照らしました。

おかしいと思った   漫画家に親しげに話しに来たり・・しかし著名な鑑定家がオリジナルを贋作と言い切るのはねえ

辰巳は笑い声を上げました。

露伴先生とも思えないつまらないプロットだな   しかしがっかりだ・・

辰巳が話していると突然ニコラスが叫びました。

うわあ!  なんであそこに兵隊が?  そこだ!  そこに・・

ニコラス?

ニコラスは倒れました。ユーゴが駆け寄ると銃で撃たれています。

誰が銃を?  お前ニコラスに何をした??

ユーゴは露伴を問い詰めます。

俺は何も

露伴はフランス語で言います。

ウソをつくな!  日本で雇ったヤツがお前はヤバいと連絡してきた

襲いかかろうとするユーゴを辰巳が止めました。

ユーゴ、黙れ!

オークションの男たちも繋がっていたのか

ユーゴは露伴の胸ぐらを掴みますが露伴はユーゴを突き飛ばしました。するとユーゴはナイフを出します。そして泉の持っている絵を奪おうとしました。

やめて!

露伴がユーゴをひっぱり二人は揉み合います。露伴はナイフを取り上げると投げました。露伴に突かれ倒れたユーゴはうめきながら言いました。

お前ら日本語で何を喋ってた   辰巳、まさか俺たちもモリスみたいに?

ユーゴ落ちつけ!

モリスみたいにって?  辰巳さん、どういうこと??

エマが聞きます。辰巳は観念したように話し出しました。

露伴先生、あなたやっぱり私たちのことを探ろうとここへ来たんですね?

辰巳は絵を拾いながら続けます。

モリスの絵を相場以上で買って・・

いや  僕は仁左右衛門の絵を探しに来ただけた

モリスは急におかしくなったんだ! 足を洗うとか言い出して   ここで何かを見たとかどうとか・・

露伴は目の前の壁にある黒い闇に気づきました。

まさかあれが仁左右衛門の・・

露伴は吸い込まれそうな闇に見入ります。辰巳もその闇を見ました。

この世で最も黒くて最も邪悪な絵

モリス!

急に辰巳が何かに向かって叫びました。

お前、どうして・・

辰巳は一人で暴れ出し首を押さえて苦しみます。

決して見てはいけないし触ってはいけない

先生?

泉くん、そのまま向こうを向いてるんだ   絶対に僕の方を見るな!

なんでです?

いいから!

モリス!  やめてくれ!!

辰巳はもがき苦しみます。すると今度はエマの様子が変わりました。

ピエール?  あなた、ピエールなの?

一体みんなどうしたんだよ  おかしくなってる?

ユーゴが怯えてわめきました。

先生、みんなどうしたんですか?

幻覚だ   彼らは幻覚を見てる

幻覚?

あの時公園の池で目を離さなければ・・  ピエール!

エマは何かを抱きしめようとします。

ママのせいね   全部ママが悪いのよ   許して   ピエール

エマの周りでごぼごぼと水音が響き、エマの体から水が溢れ出しました。

エマさん?

泉が叫びます。露伴は上着を脱ぐとエマに被せました。

泉くん、彼女を連れて外に出るんだ!

はい!

急げ!

泉はエマと走り出します。

すまなかった  謝る

辰巳はモリスに話しかけていました。

お前を騙して利用した  でも殺す気はなかった

辰巳の顔を蜘蛛が這います。辰巳は目を閉じガクリと動かなくなりました。

お前、誰だ?  爺さんちの火事で死んだ人だ   そうだろう?

ユーゴは幻に向かって許しを乞うていました。

爺さんがイカれて油を撒いたから・・  許してくれ!   わああ!!

ユーゴは断末魔の声を上げました。

***

一人露伴だけが倉庫に残されました。

光が反射する鏡は人を映すが  絶対的な黒が映すものは何か

それは  過去だ

ユーゴの体は炎で焼かれ床を転がります。

そして襲ってくるのは自分が過去に犯した罪

辰巳は殺したモリスに襲われ・・

そして心に刻まれた後悔だ

エマは溺れて死んだ息子を嘆き・・

それだけじゃない   恐らく先祖の犯した罪までもが襲ってくる

ジャックは鎧と甲冑の兵士に襲われ階下に落ち・・

そしてモリスは・・罪の意識に苛まれながら贋作を描き、黒い絵に誘われそこに自分の後悔を見た   そして死に向かいながらキャンバスに黒い絵の具を塗りたくり絵を仕上げた   その時辰巳らがやってきてフェルメールのオリジナルを寄越せとモリスをつるし上げた   するとそのままモリスは息絶えた

露伴は自分の黒く染まった両手をながめました。

じゃあ、僕には何が来る?

黒い絵には奈々瀬が描かれていました。斧を引きずった着物姿の男が露伴の前に現れます。

仁左右衛門か

男は斧を振り回して露伴を襲います

どうして?

露伴は逃げながら叫びました。

ヘブンズドア!

しかし空しい抵抗でした。

駄目だ   彼は死んでいる   書き込めない

男は斧を振り上げます

逃れられない

すると奈々瀬が男を押さえていました。

何もかもすべて忘れて

露伴は自分を指し唱えました。

ヘブンズドア

そして記憶をすべて消すと本に書き込みました。

***

露伴は倉庫に一人でした。うめきながら倉庫から逃げ出します。階段を這いながら上がると自分の手の文字に気づきました。

顔の文字をこすれ・・?

露伴は顔をこすり、文字を消して記憶を取り戻します

倉庫の仁左右衛門の絵はユーゴの炎で焼かれました。

***

エマは外で正気を取り戻しました。泉はエマに語りかけます。

エマさん   もしピエールくんが見えたとしてもそれはエマさんを責めるためじゃないと思います ただそばにいたかったんじゃないかな

泉は5歳の時に死んだ自分の父の写真を出しました。

父は旅行が好きで生前パリにきてルーヴル美術品の正面で写真を撮ったんです   私も同じ場所でエマさんに撮って貰ったでしょ

ほら

泉は自分の携帯の写真と父の写真を並べてエマに見せました。

同じ位置でしょ   父のそばにいる気がするんですよ

そう言って泉は微笑みました。エマは泣きながら泉を抱きしめます。

***

露伴と泉はカフェで話します。

なんか地下室にガスが溜まっていたせいで私たちみんな幻覚を見たってことみたいですね

泉は露伴に言いました。

閉め切った古い空間だからな  幻覚で互いを攻撃することはよくあることだ   何しろ幻覚だからな

でもまあそのおかげで名画のすり替えが分かったのは良かったですよね   あの倉庫も完全に封鎖されたみたいですよ

露伴と泉は帰国の前にルーヴルの全容をながめます。

2016年、モネの「睡蓮、柳の反映」という幻の作品がルーヴルで発見されてる   どこのリストにも載らずに忘れられていた

露伴は語りました。

人間の手に負える美術館じゃない  そんな気がするね

<画像出典>eiga.com/movie/98646/gallery/

露伴か歩きだすと泉が笑いました。

そう言えば綺麗な女の人でしたね、あの絵の女の人

え? 泉くん、 君は見たのか?

はい、ちらっと

それでなんともなかったのか   時々君には本気で感心するよ

え? どこにですか

そういうところだ

はい?

泉は露伴を追いかけます。

***

露伴はかつてのご神木の前に立ちました。

やっと見つけたよ

すると奈々瀬の声がしました。

ごめんなさい   ああするしかなかったの   あの人を止めて   すべてを終わらせるには

露伴は奈々瀬に近づきます。

あの時は読めなかった

露伴は奈々瀬の頬に触れて唱えます。

ヘブンズドア

奈々瀬は気を失い露伴に倒れかかります。露伴は奈々瀬の顔の本を読みました。

八月吉日私は代々藩の御用絵師を務める山村家に嫁ぎ、ご嫡男仁左右衛門様の妻になりました。仁左右衛門さまは私の黒髪を大層気に入られ熱心に絵に描きました。

好奇心旺盛な仁左右衛門様は宗派の異なる絵や蘭画、浮世絵などまで描かれましたが、御用絵師を継ぐものとしてそれは許されぬこと、お父上の逆鱗に触れて勘当されました。

山村家を出た私たちは顔見知りの商人に襖絵や屏風絵等を描いて生業とし、それ以外の時仁左右衛門様は好きなものを描いて穏やかに暮らしました。

けれど私の黒髪を描くことへの執着は消えませんでした。

もっと黒い  吸い込まれるような黒なんだ  私が欲しいのは

私が病で倒れると仁左右衛門様は私の医者と薬代のために勘当された家に戻ろうとしました。

わしをしのぐ絵を描いたなら家に戻るのを許そう

お父上は告げました。その日から仁左右衛門様は寝食を忘れて絵を描くことに没頭しました。

私は仁左右衛門様を困らせている病をなんとか治したいと神仏にすがり、神社にも熱心に参拝しました。そこで私は神社のご神木から滲み出している黒い樹液に気づき、集めて仁左右衛門様に持っていくと仁左衛門様は狂喜しました。

これだ! この黒だ!!

仁左右衛門様は自ら樹液を汲んでは私の黒髪を描きました。しかし山村家を継ごうと望んだ仁左右衛門様の弟が家に戻ろうとする仁左右衛門様を邪魔にして、御神木を傷つけたと仁左右衛門様を訴えたのです。

仁左右衛門様は捕らえられてしまいました。

私は御神木を傷つけていません! 樹液を汲んだだけです!!

うるさい! 御神木に触れただけでも畏れ多い

役人は聞き入れません。

待ってください!  私がやったのです!!

奈々瀬!  来るな

役人は私を打ちすえました。

奈々瀬!  おのれ・・  許せぬ!!

仁左右衛門様は斧を手にして役人たちと闘いました。 乱心した仁左衛門様は斧で御神木を切りつけ黒い樹液を浴びました。

黒い姿となった仁左右衛門様は絵を仕上げると息絶えました。黒い樹液は蜘蛛のような生き物となって絵に染み込みました。仁左衛門様の怨念と共に・・

それからずっと人を後悔と罪の念で殺すこの世で最も邪悪な絵となりました

そして私もまたそこから離れることができずに存在し続けました・・

奈々瀬は黒い葉を御神木に供えました。

いつか止めてほしい   そう思い続けてあなたを巻き込んでしまった

ごめんなさい   本当に

奈々瀬は謝りました。

いや、あの夏も僕にとって必要な過去の一つだ   二度と忘れない

奈々瀬は微笑んで姿を消しました。

山村奈々瀬・・  生まれた家の姓は 

岸辺

***

先生、昔の顔料を見つけましたよ!  イモリの丸焼きで・・

露伴の家にやってきた泉は顔料の溢れていた部屋から顔料が一切なくなっているのに驚きます。

どうしたんですか?  次のカラー原稿、日本画の絵の具で描くんじゃ?

やめた  やっばり慣れたもので描く方がいい

じゃあ、せっかく買ってきたこれは?

いらない

え〜?  じゃあ・・とりあえず、 借りてた本を返しますね

泉が書庫に本を返そうとするとスケッチブックが落ちました。開いたページには奈々瀬の横顔が描かれていました。

泉は思わず微笑みます。

すると露伴がスケッチを取り上げ書庫に差しました。そして、泉を無理やり家から追い出します。

先生ったら!

ちなみに顔料のイモリは丸焼きじゃなくて黒焼きだ!

泉を追い出して露伴が一息つくと窓際で音がしました。露伴が見に行くとかつて青春の日に露伴が描いた奈々瀬の原稿が落ちていました。

露伴は原稿を拾い窓の外をながめて微笑みました。

映画の感想

この映画を観て”黒”って確かに謎に満ちた色だなあと思いました。ブラックホールは周りをすべて吸い込んじゃいますしね・・逆にホワイトホールは吐き出すんですよね。そして黒いワンピースを着た木村文乃さんが綺麗でした。この方はこういう物の怪みたいな不思議な役が似合いますね。ドラマ(映画だったかな?)の「スペック」にも出てましたよね。

<画像出典>eiga.com/movie/98646/gallery/

カナエは一度だけルーヴル美術館に行ったのでそんな興味からもこの映画は面白かったです。ただいつ撮影したのか知らないけど(多分閉館直後とか?)モナリザはガラスケースに収められてて生では見れませんでした。それも列に並んでやっと見たって感じでした。ルーヴルは広くても人がいっぱいでした。そんな人ごみの中で模写をしてる人もちらっと見たかな?ざわざわしてるのにすごい集中力だと思いました。ルーヴルのお勉強にもなる映画でしたね(>_<)。

コメント

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