雨があがれば蒸し暑い!そんな中ウォーキングで汗びっしょりなカナエです😓。
今回は少年の心の葛藤を描いた映画「怪物はささやく」をご紹介したいと思います。
映画「怪物はささやく」で少年の真実とは何だったのか??
🌒映画データ
製作年 2016年 アメリカ・スペイン合作映画
監督 J・A・バヨナ
原題 A Monster Calls
原作 パトリック・ネス
脚本 パトリック・ネス
音楽 フィルナンド・ベラスケス
キャスト ルイス・マクドゥーガル、フェリシティ・ジョーンズ、シガニー・ウィーパー、リーアム・ニーソン 他
🌒映画のあらすじ(ネタバレ)
病気の母親リジー(フェリシティ・ジョーンズ)と二人きりで暮らす少年コナー(ルイス・マクドゥーガル)は友達もいず、同級生からはいじめを受けるという辛い生活を送っていました。
コナーの家からは古い礼拝堂と墓地、そしてイチイの大木が見えます。夜になるとコナーは悪夢にうなされていましたが、夜中の12時を過ぎるとイチイの大木が怪物に変わってコナーの処へやって来るようになりました。怪物(リーアム・ニーソン)はコナーに三つの物語を話した後でコナーに自身の真実を話すように命じます。
そんな取り決めは嫌だと拒否するコナーですが、怪物が真っ赤な口を開けて食べてしまうぞ、と脅したので仕方なく最初の物語に耳を傾けました。

怪物が話した最初の物語
それは昔の王国での王座を巡る王妃と王子の争いの物語。
魔女である王妃は王様が死ぬと孫である王子がまだ若すぎるために王座に就きました。
(王様は戦争で3人の王子を亡くし母親である先の王妃にも自殺されていました。残されたのは孫の王子のみ。王子を可愛がった王様ですが魔女と噂される後の王妃と再婚した後で亡くなってしまいました。)
王座が気に入った魔女である王妃は若くて美しいことを武器に王子を誘惑して王座に居続けようと画策します。けれど王子にはすでに恋人がいて二人は逃亡して結婚しようとします。イチイの木の下で一晩過ごした二人ですが、そこで恋人が何者かに殺害されてしまいました。
魔女の王妃が恋人を殺したと怒った王子は王子を応援する国の民とともに王妃のいる城を攻めました。イチイの木の怪物も起き出して城に向かいましが実は王妃を逃がしてやったのでした。
何故王妃を逃がしたの?
コナーが訊ねると怪物は答えました。
それは王子の恋人を殺したのは王子自身だったからだ。王子は恋人を殺されたと周りから同情をかって王妃に罪を着せて追い出して王座に就いた
その物語に善人はいないの?
コナーは困惑します。
しかし王子の治世は戦争もなく平和で民は満足していた
怪物はコナーに言いました。
誰でも善と悪の中間なんだ
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母親リジーの具合が悪くなって病院に入院することになり、コナーは祖母の家で暮らすことになりました。気難しい祖母との生活をコナーは嫌がります。けれど離婚した父親がアメリカから訪ねてきてコナーを喜ばせました。二人は遊園地で遊んで楽しい時間を過ごしましたが、父親は数日滞在するだけでアメリカに帰る予定です。彼にはアメリカに家族がいたからです。

祖母の家に戻るとコナーは時計を12時過ぎに回して怪人を呼び出し、祖母の居間にあるものを滅茶苦茶に壊します。怪人はコナーに第二の物語を語り始めました。
怪物が話した二番目の物語
工業ラッシュが起こって町に工場ばかりが造られ、木や川や空気も汚れていた150年前。
森に樹皮や木の実を煎じて薬を作る時代遅れの老いた“調剤師”(今で言う薬剤師)が住んでいました。先進的な考えの若い牧師がこの老人の作る薬は迷信臭いと町の人に伝えたことで、調剤師にクスリを頼む人はいなくなっていました。それでも老調剤師は牧師の住む教会の庭にあるイチイの木が万病に効く癒しの成分があると言われていることから、その樹皮で薬を作りたいと牧師に頼みます。しかし牧師は当然のように断りました。
その後牧師の二人の娘が重病になって新しい薬も祈りも通じなくなってしまい、牧師は老調剤師にクスリを作って欲しいと頼むしかありませんでした。老人はこれまでの牧師の信念はどうなったのかを訊ねます。
信念なんか・・それよりも娘を救いたい!!
老人は牧師を嘲笑い、薬を与えなかったので牧師の二人の娘は亡くなりました。
そしてイチイの木の怪物は起き出すと牧師の家を壊しました。
何故牧師の家を壊したの?娘を救おうとしたのに・・
コナーが訊ねます。
人間には信念が何より大事なんだ 調剤師は最後まで自分の信念を貫いたが牧師は捨ててしまった
怪物は言いました。
気がつくとコナーは一人で祖母の部屋を壊していました。帰ってきた祖母は怒りに震えていましたが何も言いませんでした。
次の日やってきた父親が「よく壊したな」と言いつつ片付けを手伝ってくれました。
どうして罰しないの?
罰するなんてしないさ
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父親は帰ってしまい母親の病気は悪化するばかりでした。
コナーは学校でいじめっ子から言われます。
お前はどうやら殴られたがっているようだからもう殴らない 相手になんかしない
お前なんか透明人間だ
その言葉にコナーは奮い立ちます。時間はお昼の12時過ぎで怪物が背後にやって来ました。
怪物はコナーにささやきました。

三番目の話だ。”誰からも見えない男の話”
周りから無視されている男は「誰にも見えないものが存在しているといえるのか?」と思い至って怪物を呼んだ
その言葉にコナーは大声をあげました。
叫びながらいじめっ子を怪物と一緒に追いかけるコナー・・実はコナー一人でいじめっ子を殴っていました。
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いじめっ子を怪我させたコナーはもう透明人間ではなくなり逆に注目を浴びる存在になりました。けれど話しかける生徒はなく遠巻きにされてさらに孤独になりました。
そんなとき教師から病院に行くよう指示されたコナー。母親の病気が重篤になったのです。
病室に行くと母親はとても具合が悪そうでした。
イチイの木の成分の入った薬が効かないの・・
“癒しの木”なのに何故効かないんだ??”
コナーはイチイの怪物の処へ走りました。
ママを直して!!
木は怪物に変貌してコナーに言いました。
お前を癒していただけだ ・・もうママは薬では治らない
ママがいなくなっちゃう!
泣き声を上げるコナー。
ママはあそこにいる
礼拝堂の前にリジーが昔の姿で立っていました
コナー
笑いかけます。
いつもの悪夢だ
コナーは走り出します。
ママ!危ない!!
大丈夫よと笑うリジーの足元が崩れて地割れに落ちていきます・・コナーは走り寄りリジーの手を掴みました。
コナー、手を離さないで・・
離すものか!!
言葉も空しく母親は暗闇へと落ちてしまいました。
ママ!!
お前が4番目の真実を告げる時だ
怪物は言いました。
僕を罰して!
コナーは叫びました。
助けられたのに手を離したんだ。・・終わりにしたかったんだ・・
あふれる涙をぬぐおうともせずコナーは言いました。
ママは治らないことを知ってた・・この状態を終わらせたかった
それがお前の真実だ
怪物は言いました。
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リジーの最期の時が迫っていました。素直になれと言う怪物からの助言を受けてコナーは母親を抱きしめます。
行っちゃいやだ
リジーは薄れていく意識の中でコナーの背後にいる怪物に目をやり少し笑顔を見せました。
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母親が亡くなってコナーは祖母からリジーの部屋の鍵を貰いました。
ママの部屋を使って
祖母とはリジーの死で仲直りしていました。二人で暮らしていけそうです。
部屋に入ると机の上に昔リジーが描いたスケッチ帳が置いてありました。
コナーがそれをめくるとイチイの木の怪物の絵が描かれていて、思わずコナーは微笑むのでした。
🌒映画の感想

コナーの悪夢に出て来たイチイの木の怪物・・彼は一体誰だったんでしょう?
この怪物の声をリーアム・ニーソンが出していて、最後にニーソンは幼いリジーと写真に写っていました。・・ということは怪物はコナーのママのお父さん、するとコナーのおじいちゃんだったということになるんですね。リジーのスケッチブックには怪物の絵がありましたしね。
カナエ的には怪物がコナーに教えた3つの物語・・「人間は善人と悪人の中間」「信念を貫け」「透明人間になるな」は母親リジーからの死別してしまうコナーへのメッセージではないかと思いました。
コナーは治らない病気の母親との暮らしが辛くてもう終わって欲しいと実は願っていました。そしてそんな自分を罰して欲しい、とも思っていました。リジーはコナーのそんな心をわかっていたと思います。だから怪物に自分の気持ちを最後に正直に吐き出せ!と言わせたと思うんです。
リジーは自分がいなくなった世界でコナーが自らを攻めないように、人間というものは善意と悪意を同等に持っている、自分の考えたことには自信を持ちなさい、透明人間にならずに発言をしていきなさいと教えたのではないでしょうか。
それまでのコナーがあまりに自分の気持ちを周りに伝えない子だったのでとても心配していたと思います。
筋のはっきりしない映画でしたが、幻の怪物はもしかしたらまだごく小さかった頃に母親から聞いた話をコナーが覚えていてそれが悪夢に現れた、コナー自身が自分で自分を変えていこうとしたという考え方もできますし、もっと簡単にやっぱり死んだおじいちゃんが娘のリジーやコナーのこれからの人生を心配して現れたと言う解釈も出来ると思います。死にゆくリジーが怪物に気づいたのはそのせいだったと納得もできますし。
ともあれコナーを演じたルイス・マクドゥーガルの演技が素晴らしくてもらい泣きしてしまった秀作でした♥。
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