今日は。今日は涼しくて嬉しいカナエです♡。
先日女性同士の恋愛映画「キャロル」について書いたので今日は男性同士の恋愛映画をご紹介したいと思います!
暗い迷路にはまり込んでいく捨てがたい想いを描いた傑作
【映画モーリス】
🌼作品紹介🌼
映画公開 1988年(日本)
監督 ジェームズ・アイボリー
脚本 ジェームズ・アイボリー、キット・ヘスケス=ハーベイ
原作 E・M・フォースター
出演 ジェームズ・ウィルビー、ヒュー・グラント、ルパート・グレイブス他
E・M・フォースターは1914年にこの小説を書きましたが、同性愛は当時の社会では受け入れられていませんでした。フォースターが亡くなってからおよそ70年後やっとこの小説は出版されました。
🌻ネタバレあらすじ
英国の名門ケンブリッジで学ぶモーリス・ホール(ジェームズ・ウィルビー)は、上級生の貴族出身のリズリーを通してその級友で良家の子息のクライヴ・ダーラム(ヒュー・グラント)と知り合います。すぐに打ち解けて楽し気に言葉を交わすようになる二人ですが、ある日クライヴから“きみが好きだ”と告白されるモーリス。
突然のことに驚くモーリスにクライブは拒否されたと思い沈み込みます。しかしある晩、モーリスは窓からクライブの部屋に忍び込んで彼に愛を告げるのでした。
<画像出典>https://eiga.com/movie/50144/
互いの心がわかると授業をさぼってバイクで遠出する二人。上級生のクライヴは弁がたつ美青年でまだ子供っぽいモーリスはグイグイ引っ張られていきます。
森で二人は親密に語り合いモーリスは恋人と肉体的に結びつくのを望みますが、クライブは男性同士の愛は(ギリシャの思想家のように)プラトニックが至上であり、肉体な接触は醜いと拒みます。
彼を愛するがゆえに従うしかないモーリス・・・しかしこれが彼の苦悩の始まりでした。
モーリスは授業をさぼったことを教師から叱責され謝罪をしなかったことから実家へと戻されてしまいます。家族からは学校に謝るように勧められますが、モーリスは大学をやめて、自分の死んだ父親と同じ株の仲買人の仕事に就くのでした。それでもモーリスとクライヴの関係は切れずその後も交流を続けます。
しかし二人は秘密の恋人同士であっても、互いの袖のカフスを外したりネクタイを緩めたりし合うのが最大のスキンシップでそれ以上はクライヴに禁じられていました。モーリスの目の前でクライヴはバタンと扉を閉めてしまう・・まるでおあずけをされたワンちゃんと同じ状態のモーリスなのでした。
<画像出典>https://eiga.com/movie/50144/
一方クライヴというと良家の跡とり息子でもあり大学を出て弁護士を目指していました。なので彼はきっと世間の目をモーリス以上に気にしなくてはならなかったのでしょう。
二人は表面的には友人として家族ぐるみでおつきあいしていましたが決定的なことが起こります。クライヴの学友で貴族のリズリーが男色的な行いをしたとして逮捕されてしまうのです。
その時弁護士になっていたクライヴは裁判で弁護して欲しいとリズリーから頼まれます。・・が、クライヴは自分も同じ境遇だと思う辛さで仕事を受けませんでした。
それでも友人がどうなってしまうか気にはなるし良心の呵責にも耐えかねてクライヴは裁判を傍聴します。
なんとか犯罪者にはならなかったものの前途有望な貴族の御曹司だったリズリーは社会的に封殺されてしまう・・裁判が終わると地下の深い階段に連れられて行くリズリー。それはその後の彼の未来を象徴しているようにみえクライヴはこの事件に大きな衝撃を受けるのでした。
自分もリズリーのようになることを恐れるクライヴ。彼はモーリスを避け冷淡になっていきます・・。
モーリスはクライヴが冷たくなったことに悩みますが、クライヴはギリシャへの一人旅から帰る途中モーリスの家によって、モーリスにこれまでの関係を終わらせようと提案します。混乱したモーリスは強引にクライヴにキスしますがクライヴに突き飛ばされてしまうのでした・・。
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クライブとつきあいが絶たれて傷心のモーリスの処へクライヴから結婚したとの知らせがきます。
ショックで真っ白になるモーリスですが表面上は穏やかに応じます。そんなモーリスにクライブは結婚式に親友として出席してくれ、などというのでした。
クライブと友人づきあいを続けるモーリス。でも心の中は地獄でした。君さえいればいい、と言うモーリスに他の幸せもある、と言うクライヴ。
悩みぬいたモーリスは精神科医に救いを求めます。医師に自分の秘密を正直に話すことで彼は少し安心するのでした。
<画像出典>https://eiga.com/movie/50144/
けれどクライヴの屋敷でモーリスを見つめる青年がいました。屋敷の狩猟番、アレックです。
彼は夜になると庭で一人モーリスの部屋の窓をじっと眺めていました。そしてある晩ついにモーリスの部屋に窓から忍び込んで彼と関係を持つのでした。
でもクライヴの使用人と肉体関係を持ったことに恐れを抱いたモーリスはすぐに自分の職場に戻っていきます。それでも彼を追うアレック・・。
アレックはモーリスにクライヴとの関係や、モーリスの苦しい胸の内に気づいていたと告げます。
彼の純粋さに心打たれるモーリス・・孤独だったモーリスは再びアレックと関係を持ってしまいます。
そして彼と共に生きていこうと決心するのでした。
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クライヴのもとを訪れたモーリスは自分はアレックと関係を持ったこと、彼と生きることを伝えます。
きみは破滅するぞ
そう彼を止めるクライヴ。
けれどモーリスはアレックのもとへ行ってしまいます。
茫然と窓辺に立つクライヴ。
彼の脳裏に学生時代のモーリスの姿が浮かびます。
来いよ
クライヴに手招きするモーリス。
それはこちらの世界に来いという事。
でもクライヴの気持ちを察したように笑って去っていくのでした・・。
クライヴの妻が夫を心配して寄り添います。
笑顔になるクライヴですがその表情はとても寂し気でした。
彼は静かに窓を閉めて映画は終わります・・。
🌻その時代の禁忌を犯すものたち
この時代の英国では男色は犯罪と見なされ禁じられた行為でした。
<画像出典>https://eiga.com/movie/50144/
快活なクライヴにただ従うモーリスでしたがもともとクライヴは上級生でモーリスよりも上流家庭の息子だから遠慮があったのでしょうか。でも結局クライヴは我儘で自分勝手。プライドが高いから自分が男色家だと周りに知られることが耐えられなかった・・。
当時の英国では男色は犯罪ですから、そうした人たちにとっては地獄の苦しさだったでしょうね。
それにしても映画の中で肉体関係を禁じられたモーリスの姿は、悩み迷うことが恋愛を色っぽくするするのか甘く妖しく感じられました。具体的な恋愛シーンもないのに映画全体がモヤっとしてるのは愛の行為を禁じられたモーリスの欲求不満というか・・飢えみたいなものが漂っていたからでしょうか。
クライヴだって本当はモーリスのことが好きなんでしょう。モーリスの手を取ってキスするクライブの表情の方が妻といる時よりずっと幸福そうに見えます。
でも妻との結婚が世を忍ぶ仮の姿であっても・・モーリスに手招きされても追うことが出来ないクライヴ・・映画の終わりでそんなクライブの悲しみが透けて見えてきて、罪の意識なくして艶やかな恋愛映画は描けずと感じ入りました
<画像出典>https://eiga.com/movie/50144/
モーリスとクライヴの関係は暗い夜の岸辺に咲く花のよう・・その甘い香りは見る者の胸をざわつかせるのです。
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