こんにちは。
暖かくなってずっとこのままかな~と思っていたらここ数日は寒くて北の方では雪まで降った様子。コロナも天気も予想がつかない、混沌とした時代になっていますね。
今回はそんな不安定な天気にも似た人間の心を学問として確立させた二人の大家、フロイトとユングの実話をもとにした映画「危険なメソッド」をご紹介したいと思います。
お互いを敬っていたはずのフロイトとユングだったのにある女性が原因ですれ違い始める・・
📖映画データ
2011年
A Dangerous Method
デビット・クローネンバーグ
クリストファー・ハンプトン
キーラ・ナイトレイ、ヴィゴ・モーテンセン、マイケル・ファスベンダー他
📖映画のあらすじ(ネタバレ)
1904年、チューリッヒにあるベルクヘルツリ病院。
精神科医のユング(マイケル・ファスベンダー)はザビーナという女性患者(キーラ・ナイトレイ)を担当することになりました。
精神を病んで荒ぶるザビーナにユングは対面でなく患者の後ろから話しかけ、患者にプレッシャーを感じることなく語らせるという談話療法を開始します。
<画像出典>https://eiga.com/movie/57539/gallery/
この療法は精神分析学の権威であるフロイト博士(ヴィゴ・モーテンセン)の提唱したものでしたが、初めはユングに心を開かなかったザビーナの病状は劇的に改善していきます。そしてザビーナは幼いころ厳格な父親に躾としてぶたれることで性的な快感を感じていて、そんな自分のマゾヒズム的気質を意識下に封じ込めることで精神が乱れていたことに気づくのでした。
談話療法が成功したことに確信を持ったユングはその旨を書いた手紙をフロイトに送ります。
数年後ウィーンに行ったユングは初めてフロイトと対面します。精神分析についてのお互いの意見を交換し合った二人はたちまち意気投合。ユングはザビーナが医者を目指して医大に通っていることを報告しました。フロイトは19歳年下のユングこそ自分の後継者だと満足げに言いました。
<画像出典>https://eiga.com/movie/57539/gallery/
しかしユングは患者の心の問題をすべて性衝動に結びつけようとするフロイトの考えに疑問を抱きます。
その後ユングは神経症に苦しむグロス博士の治療をフロイトから任されますが、グロス博士は患者の精神を解放するためにも精神科医は患者と寝るべきだ、と主張してユングを抑制的すぎると批判して失踪しました。
そのころユングはザビーナから自分の病気が完治するためにはセックスが必要であって、あなたと寝たいと請われていました。グロス博士の考えが心にあったユングはザビーナとベッドをともにしてしまいます。
<画像出典>https://eiga.com/movie/57539/gallery/
自虐を好むザビーナとの戯れは刺激的でしたが、妻も子もある家庭人のユングはいつまでも続けられない関係だと悩みます。
二人の不倫の噂を聞いたフロイトはユングの行動に懐疑的でした。ユングの方は自分の精神分析がフロイトのものとは違ってきたことでフロイトと距離を感じるようになります。
ユングはザビーナに別れを切り出しました。ザビーナは自分はフロイト向きだと言ってフロイトの患者になります。
ザビーナのこともありフロイトとユングの対立は激しくなっていきます。決別は決定的となりました。
<画像出典>https://eiga.com/movie/57539/gallery/
医大を卒業し精神分析医となったザビーナは結婚後、再びユングを訪ねました。フロイトとの決裂後ユングは医者をやめて鬱々とした日々を送っていました。
久しぶりに会話する二人。ユングはきみとの愛は大切だった。自分自身になれた、とザビーナに告白します。
ユングはある想念に苦しめられているようでした。それは欧州に血が流れるという不吉なものでした。
分析医のザビーナもそんなユングを癒すことは出来ず、静かに彼のもとを去ります。
その後欧州を揺るがす世界大戦がおこり、ザビーナやユングたちの運命はバラバラに離れていくのでした・・。
📖映画の感想 ―フロイトとユングという歴史的偉人の関わりがドラマチック!
うわっユングがセクシーすぎる!
というのが映画を観だしたカナエの印象でした。実はカナエ大学時代心理学の講義をとっていて何冊かユングを愛読していたので・・。
<画像出典>https://www.amazon.co.jp/フロイトとユング-講談社学術文庫
実際の二人はこんな感じ(左がユング)。
男盛りのマイケル・ファスベンダーはこの時代の背広姿がすごく似合ってて学者という知的な役もあって色気が半端ない(知的であればあるほどなんか色気って増しますよね😅特に横顔が素敵💛)。キーラ・ナイトレイはカナエは個人的にパイレーツオブカリビアンの最初であまりの美しさに悩殺されてしまったので、その後はあ、美人ねという醒めた印象になってしまったけど精神異常という役をかなりぶっちぎりで演じていて迫力がありました。
フロイトはロードオブザリングのヴィゴ・モーテンセンで・・いい雰囲気だけど野性的なイメージが強すぎてちょっと違うのでは?と思ってしまいましたが。
映画の中のフロイトとユングを見ていくと、心理学という分野の立役者であるフロイトは世間に自分の学問を浸透させようと躍起になっていたところがあって、患者の症状をなんでも性的衝動で片付けようとします。けれどユングの方はそれだけではなくもっと普遍的な概念がある、とフロイトの説では不十分だと考えました。
この時代は遺伝子情報などはまったく知られていなかったからしょうがないけど、今では人間は過去の祖先たちの遺伝子情報を持って生まれているのがわかっていますから、ユングの説(人間は意識の深層下に個人の経験を越えた先天的な集団的無意識を持つ)の方が進んでいた、ということだと思います。
ユングの心理学は神秘主義的な側面もありましたがこの映画の最後で欧州の戦争を予言していたようなくだりはそんなユングを象徴している感じですね。
まあユングもフロイトも生きた人間でしたから、二人の経済的な格差が大きかったのも決裂の原因だったでしょうね。
フロイトの家に招かれたユングが大人数いるのに料理を自分の皿にたくさん盛っちゃったり、奥さんが資産家であるユングはフロイトとのアメリカ旅行で自分だけ一等室に乗船したりしてフロイトに劣等感を感じさせたのは、心理学者なのにユングさん無神経だったんじゃないかなあ・・とため息でしたね。
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