映画「ラストレター」では福山雅治(さん)が行き場のない中年作家を熱演!彼の過ぎ去った青春時代のひとコマが痛ましいまでに美しく胸に迫る

こんにちは。カナエです。

今回は久しぶりに映像の美しさというものを再認識させてくれた岩井俊二監督の映画「ラストレター」をご紹介したいと思います。

岩井俊二監督と言えばカナエは以前このブログで「リップヴァンウィンクルの花嫁」という映画について書きましたが、この「ラストレター」では人がその人生で体験する苦しみややるせなさが浄化されて過去の時間がみずみずしく蘇ってくる・・その圧巻の展開にさすが岩井俊二監督だと嘆息いたしました!

思いがけない手紙のやり取りから真実が知らされる

映画『「ラストレター」』予告【2020年1月17日(金)公開】

💌映画データ

製作年 2020年

監督岩井俊二

脚本岩井俊二

原作岩井俊二

音楽小林武史

主題歌森七菜

キャスト松たか子、福山雅治、広瀬すず、森七菜、神木隆之介他

💌映画のあらすじ(ネタバレ)

姉・未咲葬儀に参列した裕里(松たか子)は未咲の娘の鮎美(広瀬すず)から未咲宛ての高校の同窓会の案内状を託されました。

裕里は姉が亡くなったことを伝えようと同窓会に出席しますが、25年ぶりに会った級友たちは裕里を未咲と勘違いしてしまいます。間違いを正すことも出来ず、しかたなく裕里は未咲のふりをするのでした。

<画像出典>https://eiga.com/movie/89607/gallery/10/

早々に会場を出た裕里ですが、彼女を追いかけて来た人物がいました。それは裕里の高校時代の部活の先輩乙坂鏡史郎(福山雅治)でした。乙坂は25年ずっと想い続けてきたと裕里に告げます。乙坂から名刺を貰った裕里は乙坂に手紙を書きます。実は乙坂は裕里が高校時代に憧れていた先輩だったのでした。

<画像出典>https://eiga.com/movie/89607/gallery/10/

夫と二人の子供のいる裕里は乙坂に自分の住所を教えず、自分の日常を書いた手紙を一方的に送るだけでした。返信できない乙坂は卒業アルバムから探した未咲の実家の住所へ返信を送ります。その手紙は未咲の娘の鮎美と夏休みの間母親の実家にいる裕里の娘颯香(森七菜)が受け取って読みました。二人は未咲のふりをして返事を書きます。そういうわけで乙坂は裕里と鮎美たちと知らず知らずに文通することになってしまいました。

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乙坂からの返信を読みたくなった裕里は、親しくなった義母の知人の住所を書いて手紙を出しました。すると裕里がちょうどその知人宅にいたとき東京から乙坂が訪ねてきます。驚く裕里に乙坂は同窓会で会った時から未咲ではなく裕里であるのがわかっていた、と言いました。

乙坂は大学時代に未咲とつきあっていたと言い、どうしているのか訊ねました。姉は死んだと答える裕里に乙坂はショックを受けます。

乙坂は大学時代恋人だった未咲にふられる、という苦い経験をしていました。乙坂は未咲への思いを断ち切れずに書いた小説が賞をとり、その後は小説が書けなくなっていました。それでもこの25年間ずっと未咲をモデルにした第二の小説を書こうとしていた乙坂は未咲を忘れることが出来なかったのです。

乙坂は取り壊しの決まった自分たちの高校に行ってみます。乙坂の脳裏に高校時代の記憶が広がりました。

<画像出典>https://eiga.com/movie/89607/gallery/10/

転校生だった乙坂は部活で後輩の裕里と親しくなり、姉の未咲に恋するようになります。彼はラブレターを裕里に託して未咲に渡すように頼みました。でも乙坂に恋する裕里は姉に渡そうとしません。それでも諦めずに何通も書く乙坂。裕里は観念して乙坂の手紙を未咲に渡しました。乙坂の気持ちを知った未咲は卒業生代表で読む答辞を乙坂に頼みます。乙坂が書いた文を読んで未咲は微笑みました。
・・小説家になれるよ

<画像出典>https://eiga.com/movie/89607/gallery/10/

廃墟となった高校を歩いていた乙坂は偶然にも犬を散歩させている鮎美と颯香に出会います。鮎美は未咲に、颯香は裕里に生き写しですぐに二人の娘たちだとわかりました。彼が文通相手の乙坂だとわかった娘たちは乙坂を未咲の位牌がある実家につれて行きます。乙坂は仏壇の未咲の写真の前で手を合わせます。写真は未咲の大学時代のものでした。乙坂にはなじみ深く思わず涙ぐみました。

鮎美は母親が夫との不仲に悩んで自殺したと乙坂に言います。そして乙坂の書いた本を母が何度も何度も読んでいたこと、高校時代の乙坂からの手紙を大事に持っていたことを告げるのでした。

乙坂さんのことが母には救いだった

いつか母を迎えに来て欲しかった・・遅かったけど母も喜んでいると思う・・鮎美はそう言って仏壇の母の写真を見ました。

家にあった乙坂の本にサインするように請われてサインをすると乙坂は家を出て二人と別れました。

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東京への帰り、乙坂は裕里の勤める図書館でもう一度裕里と会って別れの挨拶をしました。最後に握手した際憧れだった先輩と握手できたと裕里はしゃぎます。もう一度小説を書いてみると言う乙坂に裕里はあなたは私のヒーローなんだから頑張ってくださいと言いました。そして裕里も乙坂の本にサインをしてくださいと頼むのでした。

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鮎美は自分宛ての母親からの手紙を開けてみました。その中には高校時代乙坂が書いた卒業式の原稿が入っていました。

高校時代は無限の選択肢があります・・

鮎美は静かに原稿を読みだすのでした。

💌映画の感想・・過去からの美咲の声に揺り動かされる乙坂

<画像出典>https://eiga.com/movie/89607/gallery/10/

カナエはこの映画を観てこれは死んだ未咲の物語、そして乙坂の再生の物語だと思いました。

映画の冒頭で未咲はすでに亡くなっているのですが、乙坂たちの手紙のやりとりから未咲という人間が浮かび上がってきます。

高校時代生徒会長で皆の羨望の的だった未咲。大学時代つきあった男と結婚して失意の果てに自殺してしまった未咲・・。

彼女の人生は転落してしまいましたがこの映画では高校時代の未咲の初々しい姿、裕里や乙坂との語らいが鮮やかに描かれています。

確かに過ぎてしまった過去・・でもその思い出は永遠に残り続ける・・。

高校時代の可能性は無限に思えます。でも40を過ぎ中年になった乙坂にはもう選択肢は多くありません。乙坂は小説を書くという困難な道を再び歩み始めるのです・・過去からの未咲の応援の声を受けながら・・

この映画で唯一“負の存在”ともいえる、未咲を破滅させた夫役を演じていた豊川悦司さん、少ししか出演時間はありませんでしたが強烈な印象でした。彼は乙坂を未咲はお前のおかげで死んだんじゃない、俺のせいで死んだんだ、お前は未咲の人生になんの影響も及ぼしていない、と嘲笑います。それでも彼はもう一度お前の心情の吐露ではない本物の小説を書けと乙坂に勧めました。そしてそのとき彼と住んでいる身重の女も家に置いてあった乙坂の本にサインをねだります。

そんな風に何度もサインを請われ、周りから押されてこれから乙坂はまた小説を書いていくのでしょう。

高校時代、未咲の卒業生に向けた答辞にはこれから自分の夢をかなえられる人、かなえきれない人もいるでしょう、と書かれていました。

乙坂は【かなえられる人間】なのです。