こんにちは。カナエです。今回は暑すぎる夏を少しでも涼しい気分にしたい!ということでハンガリーのホラー映画「ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス」について書こうと思います。
終盤にわらわら出てくる悪霊達の目的は何だったのか?
映画データ
2022年
Post Mortem
ピーター・ベルゲンディ
ピーター・ベルゲンディ
ビクトル・クレム、フルジナ・ハイス、ガブリエラ・ハモリ、ユディット・シェル他
映画のネタバレあらすじ
第一次世界大戦に兵士として従軍し爆風で飛ばされたトーマス(ビクトル・クレム)は死線を彷徨いますが少女の幻を見て息を吹き返します。
<画像出典>eiga.com/movie/96217/gallery/
戦地から帰還したトーマスは遺体と遺族の最後の写真を撮る遺体写真家を生業として暮らしていましたが、戦争とスペイン風邪で大勢の死者の出た村から仕事の依頼を受け出かけることになりました。
トーマスが村に着くと村には遺体が布に包まれて納屋に放置されていました。「地面が凍って墓が掘れない」と村人は話します。トーマスはマルチャという戦争未亡人の家に泊めて貰うことにします。
トーマスはアナ(フルジナ・ハイス)という村の少女が自分が死にかけた時に見た少女と同じ少女だと気づきます。「墓の場所に行く」と言うアナにトーマスはついていきました。アナは墓石を指してそこに眠る主の名前をトーマスに教えます。
夜になりトーマスが就寝すると天井で物音がします。トーマスは天井裏まで上がり中を覗きますが誰もがいませんでした。そしてトーマスが眠りにつくと黒い影が現れトーマスを覗き込みます。
次の日朝食を食べながらトーマスはマルチャに”夜起きた物音”について訊ねました。けれどマルチャはなんでもない様子で「物音が怖いのか」と言うだけでした。
***
<画像出典>eiga.com/movie/96217/gallery/
トーマスは提供された家で仕事を始めました。運ばれてきた遺体に化粧を施し服を着せて生きているようにパリッとさせ、遺族と並らんで写真を撮ります。死者の家族は最後の写真が撮れたことを喜びました。
けれど村では不気味な死亡事件が起こり「よそ者が来たせいでおかしなことが起きた」と噂されます。トーマスは気にしませんが現像した写真に奇妙な黒い影が写っているのを見て怪訝に思いました。
村には幽霊がいるのよ
アナに言われたトーマスは写真をマルチャに見せました。
”彼ら”はもう長いこと村にいるわ
マルチャは「戦争やスペイン風邪で多くの人が亡くなったのに墓も作れない」と話します。驚いたトーマスは恐ろしい村から出て行くのでした。
トーマス、行かないで
アナが止めますがトーマスは馬で走り去ります。しかし夜になり野宿すると悪夢にうなされました。夢の中でアナが空中に吊られトーマスに助けを求めていました。
アナ!
トーマスは村に戻ります。
***
トーマスとアナは幽霊について調べ始めます。村人から霊的な出来事についての話を聞きました。多くの村人が怪奇現象を見たり聞いたりしていて、霊に夫を殺されたと疑う妻もいました。けれどそれを真実として受け入れられない様子です。トーマスとアナは妻が一人で暮らす家で霊に襲われる恐ろしい体験をします。けれど命は奪われませんでした。二人は霊が何か伝えたがっていると感じます。
トーマスは遺体の写真を見て霊が死者に引きつけられているとわかり、死体を置いた納屋に縄を張り縄に何かが動くと音が出る鳴子をつけて霊が現れるか探りました。また納屋にカメラや蓄音機を設置して霊からのメッセージを得ようとします。そしてトーマス達は蓄音機で霊の声を録音して聞くことに成功しました。
私を連れて行け
そう霊は語っていました。
***
トーマスとアナが霊との意思疎通をはかったことで霊の動きは活発になりました。
<画像出典>eiga.com/movie/96217/gallery/
悪霊が村人を襲い始めたので皆は霊を怖れて教会に逃げますが、トーマスはアナがいないことに気づきます。トーマスは教会を出て悪霊に見えない力で引きづられているアナを助けようとしますが、アナは面倒を見ている足の不自由な叔母と住む自分の家に連れられていきました。悪霊達はアナの叔母を獲物にして殺してしまおうとしていました。アナは瀕死の叔母とともに霊の餌食にされそうです。
<画像出典>eiga.com/movie/96217/gallery/
トーマスはなんとかアナを助けようと霊の好む死体を村人に協力して貰って納屋から運んできます。叔母の周りに死体が積まれるとトーマスは霊に向かって「アナを解放しろ!」と叫びました。すると死に際の叔母が起き上がりトーマスに「自分達を連れて行け」と請いました。
あの世への生き方を知らないのか
トーマスは霊達の望みがわかりました。死んでも葬式もされず埋葬もされなかった霊たちは悪霊となってこの世を彷徨うしかなく一度死にかけたトーマスにあの世への道を案内するよう求めていたのです。
霊たちの要求は激しくなりアナの家は霊の力で沈み始め地下水が流れ込んできます。トーマスは窓からアナを出してマルチャに渡しましたが水は部屋に溢れてきます。死んだ叔母がトーマスの足を引っ張り、トーマスは叔母と水の中で格闘しますが息が続かずに気を失います。霊たちはトーマスを道連れにしてあの世へ行こうとしていました。
マルチャは家から出てこないトーマスを救おうと体に縄をつけて屋根の煙突から水に潜りました。そしてトーマスを水から出し家から脱出します。
トーマス!
アナがトーマスに駆け寄ります。トーマスが目を開けると爆風で飛ばされた時と全く同じ場面でした。アナが優しく自分を見つめていました。
死にかけたトーマスのおかげであの世への道がわかったのか悪霊たちは静かになりました。トーマスは二人暮らしの叔母を失い孤児になったアナを連れて村から去るのでした。
遺体写真家とは?
1839年、フランスで実用的写真技法「ダゲレオタイプ(銀盤写真)」が発明されると亡くなった家族の記念写真を撮影することがヨーロッパで広がりました。ダゲレオタイプは露光時間に数十分間を要するので露光時間中に動くとうまく写真が撮れません。そこで動かない遺体を撮ることが流行することになったのです。
医療技術が今ほど進んでいない時代だったので病気による死亡率が高く死は身近にありました。愛する家族を亡くした遺族達は写真を撮り眺めることでその悲しみを癒やしたのです。
<参考サイト「カラパイヤ」より>
この映画は第一次大戦後を描いたものなので1918年頃と考えられ、そうした時代背景からホラー映画にぴったりな遺体写真家を主人公の仕事にしたのだと考えられます。
<画像出典>karapaia.com/archives/52202907.html
映画の感想
1900年代初めのハンガリーの貧しい村の雰囲気とかよく出ていたと思います。悪霊達も不気味で動きの演出も上手いと思いましたが、後半になって悪霊たちがやたらに暴れて筋がよく見えなかったのは残念でした。悪霊は何故トーマスに墓に連れて行ってくれなどと言ったのか、結局この霊たちは戦争やスペイン風邪の流行で死体がいっぱい出て、葬式がしたいのに神父も死んでしまい、地面が凍って墓も作れない、そんな風に供養されなかったのを恨んでいたんですね。そして悪霊になったことであの世への行き方もわからず、死にかけた経験のあるトーマスに道案内をしてほしくてちょっかいを出したったてことでした。
<画像出典>karapaia.com/archives/52202907.html
マルチャはトーマスを好きだったのかな? 未亡人のマルチャはトーマスが裸になって体を拭いているところを覗いたりしてました。トーマスが水中で死にかけたのを命がけで助けに行ったのに、最後にトーマスはアナを連れて村から出て行ってしまいます。大人だから笑顔で見送っていたけどちょっと可愛そうでした。
トーマスは親が死んで叔母さんもいなくなり家も壊れたアナの保護者になったんでしょうか。10歳のアナはもう村に身寄りはなかったのかな。仲良しとはいえ少女を連れて行く未婚の男性って現代ならちょっと怖い。アナはあと6、7年もすればこの時代結婚出来る年になるだろうからお嫁さん候補ってことなのかな。ちょっとロリータ色を感じる最後でした。
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